第一章.論題発表から大会までの流れ
ディベートに挑戦してみようと思っても、いったい何から準備を始めればよいのでしょうか。この章では、論題の発表から大会までの間、試合の準備をどのように進めていくのかを大まかに説明します。
1-1 | 試合に向けて準備しておきたいもの |
まずは復習も兼ねて、試合の流れをもう一度確認しましょう。
立論 | 「どんなにすばらしい、どんなメリットが、どうして起こるのか」「どんなにおそろしい、どんなデメリットが、どうして起こるのか」を説明する |
↓ | |
質疑・応答 | 相手の主張に対して、わからなかったこと、疑問に思ったことを質問する |
↓ | |
第一反駁 | 相手の主張に対して「それは違う」と反駁をする。また、相手からの反駁に対して再反駁を行う |
↓ | |
第二反駁 | 相手に再反駁をする。さらに、どちらの主張がどれだけ上回っていると言えるのかをまとめる。 |
そこで、各パートでのスピーチに必要な準備の内容を考えます。
- 作るもの
立論 |
試合の一番はじめのスピーチなので、事前に自分たちの主張をまとめた原稿(立論)を準備しておく必要があります。 |
質疑・応答 |
必要であれば、「こういう系の話がきたときは、この反駁を打ちたいから、この質問は必ずしておかないといけない」ということをまとめた「質疑カード」を、作ります。 |
第一反駁 |
「この話がきたら、この本のここからここまでを読んで、~なので違う、と反駁する」というように、よくある反駁の内容をまとめた「反駁カード」を作ります。
また、反駁に使えそうな資料をまとめた「資料集」を作ることもあります。 |
第二反駁 |
必要であれば、「○○の議論と△△の議論がぶつかったときには、こことここを比べて、~だから勝っていると主張する」というようなよくある議論のまとめ・比較の仕方や、「自分たちの立論のここは必ず守りたい」というところをまとめた「二反カード」を作ります。
|
- 練習しておくこと
- 作った原稿を読む練習(読み練)。試合の中でスムーズに読めるよう練習をしておます。
- どんな資料が用意できているのかを把握して、「この議論にはこれで対抗する」ということを考えておく。
以降の章では、この中でも特に重要な「立論」と「反駁カード」の作り方を解説していきます。
1-2 | 準備の流れ |
論題発表 |
ディベート甲子園の論題は毎年2月の終わりごろに発表されます。 |
↓ | |
論題の確認・下調べ | 本格的な準備を始める前に、ある程度リサーチをしておきます。 |
↓ | |
リンクマップの作成・変更 | 「プランを導入すると世の中にどんな変化が起きるのか」ということをリンクマップという図を作りながら考えます。 |
↓ | |
方針の話し合い | リンクマップの中から「良い流れ」「悪い流れ」「突っ込みどころ」を探し、どのように各サイドの主張を組み立てていくかを話し合います。(詳しい話は第二章へ) |
↓ | |
リサーチ・資料探し | 話し合った流れが現実的に考えられるかを検討したり、立論や反駁カードでの主張の強化に使うための、証拠資料を探します。 |
↓ | |
必要な原稿の準備 | 立論・反駁カードを中心に原稿を作ります。 |
↓ | |
原稿の「読み練」 | |
↓ | |
練習試合 | 人数がいれば部内でも行えますが、他校のチームにお手合わせをお願いしても良いでしょう。 |
↓ | |
反省会 | 試合の結果を踏まえて、何を改善していけば良いのかを考えます。 |
↓ | |
大会へ |
大まかな流れは先ほどの図のようになります。ただし、この流れはあくまで例です。慣れてきたら、チームの中でより進めやすい方法を探していきましょう。
補足:「プレパ」
試合の準備のことを「プレパ」と呼ぶことがあります。これは、「準備」を英語にしたpreparetion(プレパレーション)を略したものです。
1-3 | 証拠資料について |
ディベートでは、主張を裏付ける、つまり主張が正しいと証明するために、証拠資料を使います。
たとえば「軽傷(大した病気やけがでもない)なのに救急車を使う人が多いのは問題だ」という主張をするときに、
- どのくらいの人が使っているのか(統計)
- 軽傷とはどういうことか(細かな定義)
- どんなことが問題になっているのか(事例)
- どうしてそれが起こっているのか(専門家の意見・見解)
などといった証拠を組み合わせることで、より説得力の高い主張をすることができます。 そのためには、本やインターネット、新聞などのさまざまな情報をチェックして、証拠資料を集めていくことが必要です。
第二章.リンクマップの作り方・使い方
プランを導入した後の世界を考えていると、色々な話が想像できて混乱してしまうことがあります。この章では、プラン後の世界の動きを整理する「リンクマップ」の使い方について見てみましょう。
2-0 | 根拠と結論 |
リンクマップの話に入る前に、ディベートにおいて最も重要な考え方の一つをご紹介します。
試合の中で何か主張をするときには、「理由(根拠)」と「結論」をきちんと言う必要があります。 たとえば、「救急車を有料化した」ら「使う人が減る」という主張をしたいときには、どのように話をすれば良いのでしょうか。
難しい話ではありませんね。根拠がないと、言いっぱなしになってしまい、「その主張を信じていいのか」「どちらの主張が上回っているか」という評価ができません。 「お金がもったいないと思うから」という理由をつけることで、「いくらだったらもったいないと思わないのか」「もったいないと思うのはどんな人か」「もったいないと思えばいつでも使うのを控えるのか」といった形で議論を深めることができます。
2-1 | リンクマップとは |
リンクマップとは、「プランを導入することで、世の中がどう変わっていくのか」ということを、図にして表したものです。 リンクは「つながり」という意味ですから、「何がどうつながって、どんな結果になるのか」ということをまとめた図ということですね。
リンクマップを使うことで、プランが世の中に与える影響を広い視点で考えながら、立論や反駁カードの制作を進めていくことができます。
2-2 | リンクマップの作り方 |
それではさっそく、リンクマップを作っていきましょう。
手順①.まず大きな紙を用意して、真ん中に「プラン」や「P」とかきます。
手順②.次にプランを導入するとどんなことが起きそうなのかを考えます。このとき、「何が根拠で」「どんな結論になるのか」と考えるのがポイントです。
手順③.(2)に続いて、それが原因で起きそうなことを考えます。
手順④.話のオチがつくまで、(3)のように話を伸ばしていきます。アイデアが思いつかなくなったら、そこで打ち切ります。
- リンクマップ作りのルール
- できるだけ批判をしない
- よほどふざけた意見でもない限りは、どんな意見でもかき加えていきましょう。
- 他の人の意見にどんどん乗っかろう
- 「それなら、この話はどうだろう」とお互いに意見を出し合っていくことで、より広く、深く考えられるようになります。
- 質よりも量が大事
- 「この意見は良いかな?微妙かな?」と考えるのは後にして、ひとまずかたっぱしから意見を出してみましょう。
2-3 | リンクマップの使い方 |
リンクマップができたら、出たアイデアを整理していきます。
-
「良い流れ」「悪い流れ」に分ける
リンクマップのそれぞれの「流れ」が「良い流れ=メリット」なのか、「悪い流れ=デメリット」なのかを考えて、「メリットは青、デメリットは赤」というように色を付けながらたどっていきます。
-
どの流れを使って立論を作るか考える
色分けした中から、「どのメリットで立論を作るか」「どのデメリットで立論を作るか」を考えます。ここで決めるのはあくまで仮なので、「やっぱりこの話は難しそうだ」とわかったら後から変えてもOKです。
-
リンクの中の「突っ込みどころ」を探す
リンクマップを見渡して疑問に思うところを探していきます。まずは次のようなポイントを考えてみましょう。
- 「例はあるのかなあ」
- 「どのくらいの可能性・大きさ・規模なんだろう」
- 「これって現在の状態と何が違うの?」
- 「よく考えたらどうしてこうなるんだろう」
- 「これとこれって本当につながっているのかなあ」
ここで見つけたリンクの「弱点」が、立論に必要な資料を考えたり、どんな反駁カードが必要かを考える上で役に立ちます。
第三章.立論の骨組みづくり
プラン後に起きることが整理できたら、立論を作り始めます。この章では、現状分析と発生過程の流れを比べながら、立論を書く方法を紹介します。
3-1 | 立論全体の流れを考える |
立論の道筋を大まかに決めたら、立論の骨組みを作ります。慣れるまでは、下の手順のように図を埋めながら考えましょう。
- 立論の骨組みの作り方
-
「プラン後」の流れを書きうつす
リンクマップでたどった内容を、「プラン後=発生過程」のところに書きうつしていきます。うつしたら、この「良い流れ」「悪い流れ」を簡単に言い表せるように「メリット」「デメリット」のラベルを考えましょう。
-
プラン後と「現状」の違いを考える
次に、現状がどんな状態かを考えていきます。「今はこうで、プラン後はこう違う」というように、発生過程と対応するよう表裏一体で考えるのがポイントです。
-
重要性・深刻性を考える
このメリットがどうして良いことなのか(重要性)、このデメリットはどうして悪いことなのか(深刻性)を付け加えます。
-
最後に、まとめた内容を立論の形にして書き直します。
図で整理した内容に沿って、立論の文章を作っていきます。
メリットは、「救急車不足の解消」です。
現状分析です。
1.救急車の利用にお金はかかりません。
2、そのためためらうことなく使うことができます。
3.しかし、救急車の利用が多く、救急車が不足しています。
4.救急車が足りないので、患者への到着が遅れてしまっています。
発生過程です。
1.プランによりお金がかかるようになります。
2.お金がもったいないので使うのを控えるようになります。
3.救急車の空きが増えます。
4.出動の指示があったらすぐに出発できるので、患者のもとへすぐに到着できます。
重要性です。
救急車の到着が遅れると、病気が深刻になったり、急病の人が命を落としてしまいます。
救える命が救えない現状は深刻です。
補足:ラベリング
長い文章のかたまりを「ラベル」という短いフレーズにまとめて言い表すことを「ラベリング」といいます。結論を主張のはじめに言うことで、話の内容がきいている人により伝わりやすくなります。
3-2 | 立論の肉付け |
骨組みができたら、肉付けを行っていきます。 「リンクマップを作ったら」の③でメモしておいた「リンクの弱点」を参考にしながら、話し合いや資料探しを進めます。特に、以下の三点は重要です。
- 「例はあるのか」
- 「どのくらいの可能性・大きさ・規模なのか」
- 「専門家も同じ考え方をしているのか」
3-3 | 立論を書くときの注意点 |
立論を書く上で注意したいのが、メリットやデメリットには、「プランを導入したときにしか発生しない」ものを選ぶ、というところです。 「プランを導入しなくてもメリットが発生する」という場合、悪影響が出る可能性のある中で、あえてプランを導入する必要がなくなってしまいますし、「プランを導入しなくてもデメリットが発生する」という場合、プランがあってもなくてもどのみちデメリットが発生するのですから、プラン導入をためらう理由がなくなってしまいます。
立論を書くときには、「いまと比べて、プランを導入した後の世界がどれだけ変わるのか。また、どのようにしてそれだけの違いが生まれるのか」ということを、丁寧に説明していく必要があります。
特に、10年・20年という長い目で見たときには、「メリットが自然に発生する」「デメリットが発生しない」ということがあるので要注意です。
第四章.反駁カードの骨組みづくり
リンクマップをかいたときに考えた「リンクの弱点」を使って、反駁カードを作っていきます。この章では、反駁の基本的なパターンと、反駁カードの書き方について紹介します。
4-1 | 反駁のキホン |
「反駁」の基本は、相手チームの主張に対して、ただ「それは違う!」というのではなく、「なぜなら~」と理由をきちんとつけて、スピーチを行うことです。
まずは、反駁の約束を紹介します。
- 反駁の《引主根結》
- 引用
相手のどんな主張に反駁するのか。「~と述べられていましたが、」 - 主張
引用した部分に対して主張したいこと。「それは違います。」 - 根拠
どうして間違っているといえるのか。「~だからです。」 - 結論
相手の主張の何が崩れるのか。「なので、~にはつながりません。」など。
4-2 | 反駁カードを作る |
始めのうちは、「リンクマップを作ったら」の③で考えた、突っ込みどころから反駁カードを作りましょう。
有料化(一回5000円とする)すると、使うのを控えるので利用が減る
↑有料化しても、めちゃくちゃお金がない人以外は使うんじゃない?
この内容を、引主根結の流れの中に入れます。
- 引用
「有料化したら、救急車を使うのを遠慮するようになる」といっていましたが、 - 主張
それは違います。 - 根拠
よほどお金に困っている人でもなければ、救急車を使うか迷うくらい慌てている中で、たった5000円、一回家族で外食に行くくらいの金を出すのを嫌がる人はいないので、利用はほとんど減りません。 - 結論
有料化しても利用はほとんど減らず、肯定側さんの言うような問題の解決にはつながりません。
どんな反駁でも、この形が基本となります。必要に応じて根拠に証拠資料を入れることで、より説得力のある反駁ができるようになります。
実際に、先ほどの反駁に証拠資料を付けてみましょう。※版権留意
- 引用
「有料化したら、救急車を使うのを遠慮するようになる」といっていましたが、 - 主張
それは違います。 - 根拠
よほどお金に困っている人でもなければ、救急車を使うか迷うくらい慌てている中で、たった5000円、一回家族で外食に行くくらいの金を出すのを嫌がる人はいないので、利用はほとんど減りません。
資料を引用します。出典は、2008年 聖隷クリストファー大学看護学部教授 石井敏弘「救急車の不適正利用に関する実態と防止策」です。
引用開始。
『さきの「救急に関するアンケート調査」で得た横浜市の個票データを用いた解析結果によれば3000~5000円という利用料金では利用減少が見込まれない。 住民の立場で考えると、"利用の妨げ(抑制)にならない金額だから、許容できる"と解することができる。』
引用終了 - 結論
このように、有料化しても5000円では利用はほとんど減らず、肯定側さんの言うような問題の解決にはつながりません。
4-3 | 立論全体の流れに対する反駁 |
ジャッジが肯定否定それぞれの主張を評価するときには、メリット・デメリットの大きさを下の図のように考えています。
メリットの評価 = 現状分析 × 発生過程 × 重要性
デメリットの評価 = 現状分析 × 発生過程 × 深刻性
つまり、この三点のうちのどれか一つをゼロにすることができれば、プランを導入しなければならない理由、プランを導入してはいけない理由を崩すことができるということです。
そこで、立論全体の流れから考えると、「現状分析」「発生過程」「重要性・深刻性」の各部分の反駁には、次のような内容が考えられます。
部分 | 反論のポイント |
---|---|
現状分析 |
|
発生過程 |
|
重要性・深刻性 |
|
相手の立論によって、どこから攻撃を仕掛けていくのが良いのかを考えて反駁を打つようにしましょう。
第五章.資料探しのポイント
証拠資料を探すときには、本や新聞、インターネットを中心に使います。この章では、特にインターネットで情報を探すときに知っておきたいことと、資料を引用する際のポイントについて紹介します。
5-1 | 資料の種類 |
目安として、探す資料の種類ごとに、どこを探すと良いのかを簡単にまとめると、下の表のようになります。
資料の種類 | 探す場所 |
---|---|
統計 | 政府や自治体、研究機関のホームページ、論文など |
定義 | 辞書、百科事典、法律・条例の条文、政府や自治体のホームページ、論文など |
事例・専門家の見解 | ニュースサイト、新聞、論文など |
実際には、個別のホームページを確認するより、検索エンジンを使って探し出すほうが簡単に資料を見つけられることがほとんどです。
5-2 | 検索エンジン? |
「検索エンジン」は、インターネット上に散らばっているさまざまな情報の中から、指定した条件に合う情報を簡単に探し出すことのできるシステムです。
検索エンジンのサービスは数多くありますが、中でも「Google(Google社提供)」「Yahoo!(Yahoo!社提供)」「Bing(Microsoft社提供)」が有名です。
- 代表的な検索エンジン
-
Google
http://www.google.co.jp/ -
Yahoo!
http://www.yahoo.co.jp/ -
Bing
http://www.bing.com/
たとえば「名古屋」に関連する情報を探したいときには、以下のように入力エリアに「名古屋」と入力し、検索を実行することで、情報を探し出すことができます。
5-3 | 検索エンジンの豆知識 |
GoogleやYahooなどの検索エンジンでは、検索をするときに特別な条件を指定することができます。中でも、資料探しに便利なものを4つ紹介します。
* 「AND」と「OR」
-
AND指定「~も-も対象にする」
たとえば、《『名古屋』の情報のうち、『観光』の情報を紹介しているもので、『江戸時代』と関連のあるものを探したい》というときには、以下のように検索条件を入力することができます。
「名古屋 AND 観光 AND 江戸時代」
このように、《『名古屋』と『観光』と『江戸時代』のすべてに関係のある情報を探したい》というときには、3つの言葉を「AND」でつなげることで結果を絞り込むことができます。
なお、この「AND」指定は非常によく使われるので、ANDと書く代わりに「 」(『スペース』、スペースキーを押して入力できる)を入れても同じようなことができます。
「名古屋 観光 江戸時代」
ただし、スペースで区切った場合は、単語の順番によって結果を自動で絞り込むシステムにより、ANDの時と全く同じ結果にならないこともあります。
-
OR指定「~または―を対象にする」
たとえば、《『名古屋』の情報のうち、『観光』について紹介しているもので、『江戸時代か明治時代』に関連のあるものを探したい》というときには、以下のように検索条件を入力することができます。
「名古屋 観光 江戸時代 OR 明治時代」
このように、《「『江戸時代』または『明治時代』》という条件を付けたいときには、「OR」でつなげることで、結果の範囲を広げることができます。
* site:go.jp , site:ac.jp
- site:ac.jp
大学教授の書いた論文や報告書、学術文書などを探したいときには、指定した検索ワードの後ろにこのように入力します。
- site:go.jp
国の統計データや報告書などを探したいときには、指定した検索ワードの後ろにこのように入力します。
補足:「site:」指定
site:という指定をすることで、どんな分類のホームページを検索の対象にするかを指定することができます。
なお、go.jp は政府関連のホームページ、ac.jpは教育機関関連のホームページを表しています。
* -(マイナス)指定
検索の結果の中から、ある言葉の入っているものを取り除きたいときに使います。たとえば、ブログや掲示板の情報を除きたいときには、以下のように入力します。
* filetype:pdf
これは、報告書や論文を広く公開するときによく使われる「PDF文書」を検索するという意味です。先ほどの「site.go.jp」や「site:ac.jp」と組み合わせて使うこともできます。
5-4 | 資料探しでチェックしておきたいこと |
資料の候補になりそうな情報が見つかったら、以下の点をチェックするようにしましょう。
-
誰が書いたものなのか。その人は何者なのか。
… ただの「大学教授」ではなく、その人の専門はどの分野なのかも確認しましょう。 -
その資料はいつ発表のものなのか。統計データであれば、それはいつ・何人に調査したものなのか。
… あまりにも古かったり、調査対象が狭い場合は、評価されないこともあります。 - 資料の文章にはきちんと「根拠」が入っているか。
… 結論だけいきなり書いてある資料は評価されません。専門家の視点から、「これがこうなって、だからこうなる」というような説明がきちんと入っている資料を選びましょう。
補足:wikipediaやブログを使わない理由・信ぴょう性
検索エンジンで資料を探していると、Wikipediaのような百科事典や、個人の書いているブログの情報に行きつくことがありますが、このような情報は、証拠資料として使うのには向いていません。 なぜなら、Wikipediaやブログの内容は、誰でも簡単に内容を書いて公開することができるために、信用できる情報とはあまり考えられないからです。
証拠資料は「自分たちの主張を補強する」ために使うのですから、その証拠資料の内容が「信じて良いものなのか怪しい」という場合は、その資料を使ってもあまり意味がありません。 このように「信じて良いのか怪しい」ことを「信ぴょう性がうすい(ない)」といいます。
5-5 | 引用するときの注意点 |
資料を立論や反駁カードに組み入れることを「資料を引用する」といいます。 資料を引用するときには、次の四つの手順をとります。
- 資料引用の手順
- 今から資料を使うことを宣言する。「資料を引用します。」
- いつ、誰が、どんなところに発表した資料なのかを述べる。「出典は、○○年△月◇日 ××新聞です。」
- 今から言うことは資料の内容だということを宣言する。「引用を始めます。」「引用開始。」など。
- 資料の使いたい部分の内容をそっくりそのまま読む。
- 資料の内容はここで終わりだということを宣言する。「引用を終わります。」「引用終了。」など
なお、資料の本文(内容)の読み方は、資料の種類によって変わります。
- 資料の引用部分の読み方
-
資料が文章の場合
資料が文章のときには、文章単位(「。」区切り)で引用するのが基本です。「この文章は立論には関係ないから読みたくない」というときには、その部分を飛ばして読むこともできます。そのような場合は、飛ばすタイミングで「中略」と言って飛ばします。ただし、著者の言いたいことを捻じ曲げるような引用をしてはいけません。
-
資料が図表の場合
資料がグラフや表のときには、「資料は表(グラフ)なので数値を読み上げます。」と宣言してから、必要な部分を読み上げます。
ここで、グラフの資料を引用するときの例を見ておきましょう。
ディベート部の部員の数は毎年変わっています。
資料を引用します。出典は、「WEBサイト JDB ディベート部沿革 2015年6月公開」です。引用開始。
なお、資料はグラフなので数値を読み上げます。
2008年度入部 3人 2009年度入部 6人 2010年度入部 6人 2011年度入部 7人 2012年度入部 6人
引用終了
このように、年にとって2倍以上の差があります。※この資料は架空のものです
5-6 | 引用した資料の扱い方について |
立論や反駁カードで資料を引用したときには、引用した資料についての情報を控えておく必要があります。
- 控えておく情報
- 出典(本の名前、ホームページの名前、論文の名前など)
- 著者・発行者の正式名称と著者の肩書
- 発行年
- ページ数(本や雑誌) / アドレス(インターネットの情報)
また、試合中に、相手の使った資料を確認することができます。これを資料請求といいます。 資料請求を頼まれた場合に備えて、本やホームページの引用部分のコピーを用意しておきましょう。